「寄木型」看護体制

「寄木型」看護体制について

 近年、働き方や価値観の多様化が進む中、従来の勤務体制では働き続けることが難しい看護職が増えています。さらに、少子高齢化により、看護職の人材不足は今後ますます深刻化する見込みです。2040年に向けた地域医療体制の構築を進める上で、看護職の確保は最重要課題です。

 そこで私たちは、従来の枠にとらわれない新たな働き方のモデルを提案します。

 神奈川県には、伝統工芸品「箱根寄木細工」があります。異なる木材を組み合わせて美しい模様を生み出すこの技術のように、看護職一人ひとりが持つ多様な経験やスキルを組み合わせて、柔軟で調和のとれた業務体制を築く―――それが「寄木型」看護体制です。

寄木細工 従来型の看護体制 「寄木型」看護体制 従来型+寄木型による患者ケア
設計 まず完成した模様をイメージする 人員配置を起点にできる業務を考える 必要なケアを起点に役割と担い手を考える 必要なケアを必要なときに受けられる
構成 大小様々な木片を組み合わせる 担当看護職を中心に患者を支える 必要に応じて多様な看護職がケアを補完する よりきめ細かなケアを受けられる
多様性 素材の色や形の違いを活かす 個々の強みを活かして看護を提供する 個々の強みを組み合わせて看護を提供する 個々のニーズに応じたケアを受けられる
成果 美しい模様が完成する 一貫した看護を提供する 一貫した看護を支える 安心して療養・生活できる

期待される効果

  • 多様な働き方を可能にし、離職を防ぐ
  • 看護職の力を最大限に活かすチーム医療の実現
  • 地域全体で看護を支える仕組みづくり
  • 県民の健康と安心を守る持続可能な医療体制の構築
看護職(働き手)にもたらす価値 看護管理者にもたらす価値
・ 自分の生活に合わせて働ける
・ 「できる業務」で看護に参加できる
・ 担当業務をあらかじめ明確にした上で働ける
・ すべての看護業務を担う必要がない
・ ブランクがあっても復帰しやすい
・ 経験や専門性を活かし続けられる
・ 「看護師であり続ける」ことができる
・ 必要な時間帯に必要な人材を配置できる
・ 人員確保だけでなく、業務の確保という視点で看護体制を構築できる
・ 担当業務が明確なため、役割分担や業務管理がしやすい
・ 常勤看護師の負担を軽減できる
・ 潜在看護師やプラチナナースの経験や能力を活用できる
・ 特定業務の担い手を確保しやすい
・ 持続可能な看護提供体制づくりにつながる

寄木型業務の定義

  • 個人の希望に応じた勤務で、各施設の要望に応じた様々な看護業務を、「寄木型業務」とする
  • 寄木型業務を行う看護職を「Kanaナース」と呼ぶ

寄木型業務推進の根拠

1.神奈川県看護職員の量的課題

①看護職員数の不足が顕著である
◆人口10万人対看護職員数は全国平均の7割で最下位
・就業看護職員数は年々増加しており、令和6年12月末時点で89,205人。令和6年までの10年間で約1万4千人増加し、全国第7位の増加率であるが、人口10万人当たりの就業看護職員数は、全国の1,371.9人に対し、本県は967.0人であり、全国47位。
・都道府県別で全国で唯一1000人を下回り、全国平均(1371人)の7割にとどまる。最多の高知県(2262人)の半分以下の水準である。
◆常勤離職率は14%前後を推移しており全国平均を上回る
・神奈川県の正規雇用看護職員の離職率は13.6%。東京都の14.2%に次いで高く、全国平均(11.3%)を2.3ポイント上回る。(2024年JNA病院看護実態調査)
②18歳人口の減少による将来看護職数減少の危機が迫っている
◆看護学生確保困難
・学校養成所「入学者数」は、平成27年と比べ令和6年は408人減少、減少幅は11.9% ・18歳人口に対する「入学者数の割合」は4.14%~3.84%であり、令和7年は充足率87.8%と初めて90%を割り込む。
・18歳人口に対する入学者数割合を3.9%で推移した場合(10年の平均で算出)
  5年後:18歳人口:7万6,943人で入学者3,000人
  10年後:18歳人口:7万2,586人で入学者2,830人 とさらに減少する

2.復職支援の課題

①紹介派遣会社の台頭による病院経営の圧迫
②ナースセンターにおける求人側と求職者のアンマッチ
◆求人・求職の登録者数の伸び悩み
・就職者数は増加傾向にあるが、就求職登録者数に対する就職者数の割合は2割程度
・令和6年:求人登録者数6,166名、求職登録者2,682名、就職者数741名

3.神奈川県人口の将来推移を見据えた課題

①急速な高齢者増
・男女ともに健康寿命を過ぎ医療、介護に頼りがちになる75歳以上の人口増加率は南関東1都3県のなかで本県が最も高い。
・国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、2020年時点の75歳以上の人口を100とすると、2050年に神奈川県は152.9となり、全国では沖縄県の179.3に次いで増加幅が大。

今後に向けて

 少子高齢化や看護職不足が進む中、これからの看護提供体制には、これまで以上に柔軟な発想が求められています。
 医療機関にとっては、限られた人材の中で質の高い看護を提供し続けることが課題となっています。一方で、看護職一人ひとりも、ライフステージや働き方の希望に応じて、自分らしく働き続けられる環境を求めています。

 「寄木型」看護体制は、こうした双方の課題を解決する新たな選択肢です。
 看護職は「働ける時間」だけでなく、「自分ができる業務」で看護に参加することができ、医療機関は「人員確保」だけでなく、「必要な業務の担い手」を確保することができます。
 一人ひとりの経験や強みを活かしながら、多様な人材が役割を持って看護を支える。寄木型看護体制は、そのような持続可能な看護提供体制の実現を目指しています。

 神奈川県看護協会は、看護職と医療機関の双方にとって新たな可能性となる「寄木型」看護体制の普及に取り組んでまいります。

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取り組み事例のご紹介
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